前回のコラムでは、独立を考えるうえでの大枠について書きました。今回からは、私自身が独立前に考えたことや、独立後に経験したことを振り返っていきたいと思います。
法人の税務業務を中心に
経験を積みました
私は独立を見据え、法人の申告や顧問業務を中心に経験を積みました。
ただし、当時からさまざまな選択肢を比較し、その結果として法人税務を選んだわけではありません。
税理士の仕事には、法人税務以外にもさまざまな分野があります。例えば、相続税のような比較的単価の高いスポット業務を中心にする方法もあります。また、海外税務などの専門性が高い分野で経験を積むという選択肢もあったでしょう。
しかし、当時の私はそこまで深く考えていませんでした。
法人税務について、「多くの税理士が経験している一般的な業務である一方、それだけ需要も多いのだろう」と考えていた程度です。
結果として、この選択は独立後の仕事の基礎になりました。ただ、振り返ってみると、独立前にもう少し広い視点から、自分がどの分野で仕事をしていきたいのかを考えてもよかったと思います。
どのような働き方をしたいのか
考えました
独立前に考えていたのは、専門分野だけではありません。
それ以上に、「独立後にどのような働き方をしたいのか」を考えていました。
独立後の事業の形に正解はありません。事務所を大きくして多くの職員を雇いたい人もいれば、少人数で専門性の高い仕事に取り組みたい人もいます。
私は、できるだけ自由度の高い生活をしたいと考えていました。そのため、事務所を大きくすることよりも、一人で無理なく続けられる事業をつくることを重視しました。
そこで考えたのが、性質の異なる複数の仕事や収入源を組み合わせる方法です。
具体的には、次のような組み合わせを想定しました。
- 一人で行える税務業務
- スポットで行う会計士業務
- 自分の作業時間をあまり必要としない投資
- 税務や会計士業務とは異なる収入源
一つの仕事だけに依存するのではなく、それぞれの長所と短所を補い合う形を考えました。
収入源によって
それぞれ特徴があります
税務業務は、顧問契約になれば毎月の継続収入を得やすいという利点があります。一方で、一件当たりの単価がそれほど高くないことも多く、顧客数が増えるほど日常の対応も増えていきます。
会計士業務には、非常勤監査などがあります。税務業務よりも時間当たりの単価が高い傾向にありますが、毎月同じ収入が保証されるとは限りません。契約や担当業務が終了すれば、収入もなくなる可能性があります。
投資は、軌道に乗れば自分の作業時間をあまり使わずに収入を得られる可能性があります。ただし、最初にまとまった資金が必要となる場合があり、投資した資金を失うリスクもあります。
さらに、税務や会計士業務とは異なる収入源があれば、士業の仕事が減少したときの備えになります。反対に、投資収入が不安定な時期には、税務業務の継続収入が生活を支えてくれます。
このように、収入源によってメリット、デメリット、必要な時間、リスクが異なります。性質の異なるものを組み合わせることで、収入全体を安定させながら、自分が望む働き方に近づけるのではないかと考えました。
最初から計画どおりに
進んだわけではありません
もっとも、独立当初から、この形をきれいに実現できていたわけではありません。
独立したばかりの時期には、まず毎月の安定収入をつくる必要があります。そのため、当初は税務業務に自分の時間と労力のほとんどを投入しました。
複数の収入源を持つことが理想だとしても、最初からすべてを同時に始めるのは現実的ではありません。まず一つの仕事で事業の土台をつくり、その後、少しずつ別の仕事や収入源を加えていくことになります。
私の場合、その土台となったのが税務業務でした。
しかし、独立すれば自然に顧客が増えるわけではありません。税務業務を軌道に乗せるためには、仕事をどのように獲得するかを考える必要がありました。
次回は、独立後に私がどのような方法で顧客を増やそうとしたのか、その試行錯誤について書きたいと思います。